森の番人
薪小屋の陰に隠れてジッと待っていると、萌黄色の美しい
キツツキがどこからともなく現れ、すぐそこに立つコナラの
細かくひび割れた幹に、ぴたりと止まりました。
黄緑色の羽に頭部の鮮やかな赤。どこか侘び寂びを感じさせる
日本の着物的な色彩が目を引きます。
日本の固有種であるこの大型キツツキ、アオゲラも、会社を囲む
この林の住人です。
アオゲラの巣穴は、生きている木に毎年新しく掘るそうですが、
この穴は果たして、巣穴なのか、ねぐら用なのか…。
春先から様子を見ていた伊藤によれば、アオゲラの掘った穴は
林の中に何箇所かあり、この穴には日中から雄と雌の両方が
出入りしているとのこと。
「タカと同じように、ここで新たな野生の命を育んでくれたら
嬉しいよね」
ときおり、地面を這うようにして木を登っていくアオゲラ。
何だか愛嬌のある動きです。
キョッ、キョッ、キョッ。
ピョーッ、ピョーッ。
初夏の爽やかな林の中に彼らの甲高い鳴き声が響き渡ります。
キツツキの仲間は害虫を食べて木や森を守ることから「森の番人」
とも呼ばれます。
木の幹をコココココ……ッ!と激しく突くドラミングは、単に
穴を掘るためだけでなく、縄張りの主張や、雄が雌の気を引く
求愛のためだったり目的はさまざま。
アオゲラの鳴く林の上空では、タカが悠々と舞っています。
気付けばタカの繁殖期ももうすぐ。タカとアオゲラの子育てが
この林で同時に見られたら最高だなー。
新緑も濃さを増し、自然界の生命力のみなぎりをそこかしこに
感じる今日この頃です。