CRAFTSMANSHIP
TUNE-UP
Published on 2012/12/07
カーディナルを、
真の渓流スペシャルに
PART-Ⅲ
前回までの記事では、伊藤がカーディナルに見い出している利点と、軽量化によって生まれる大きなメリットについて話を聞いたが、今回は各パーツの詳細や製作にまつわる話を尋ねた。
カスタムパーツ第一弾のセット内容は、前回写真で紹介した通り下記の9点。
#01 サイドプレート
#02 サイドプレート・スクリュー
#03 スペーサー(3/33オリジナルおよびオリムピック製復刻に使用)
#04 ベールマウント・スクリュー
#05 スクリュー
#06 ドライブギアシャフト・スリーブ
#07 ドライブギアシャフト・スリーブ(代替パーツ)
#08 ナット
#09 プロテクティングリング
発想の具現化
まずは軽量化のための素材についてだが、サイドプレートには軽量化と共に変形抑止を図るカーボン樹脂を用い(エンブレムはアルミ製)、各スクリュー、ナット、プロテクティングリングにはジュラルミン、ドライブギアシャフト・スリーブには滑りが良く耐油性にも優れるジュラコンを使用している。
サイドプレートは、ひとつひとつマシニング加工によって削り出され、丁寧な手作業によるサンディングを経たのち、塗装と磨き作業が繰り返される。全ての作業を終えて出来上がったサイドプレートは何とも言えず深い輝きをまとっている。
自然豊かなフィールドを身近に持つ超現場主義の釣り人として、あくまで道具の機能性を追求する発想と、モノを作るクラフトマンとしての感性が同時に具現化され、ひとつのアイテムが完成する。イトウクラフトならではの製品開発がここにもハッキリと見て取れる。
耐久性に関しては、テストに2シーズンが費やされた。
「サイドプレートの変形、歪みもないし、ジュラコン製のスリーブについても耐久性、耐摩耗性、共に通常の使用ではまったく問題なかった」
オリジナルと復刻の違い
伊藤が使用しているカーディナルは昔も今もオリジナルの3であり、当初はそれをベースにカスタムパーツの試作を行なっていたが、復刻モデルとのパーツの整合性をチェックするべく、伊藤はこれを機に初めて復刻(ピュアフィッシング製)のカーディナル3を手に取った。
その時の感想をこう語る。
「復刻を手に持った瞬間、何かゴロンっとしてるというか、デカいなって思ったんだよ。実際に測ってみたら、まあ個体差もあるんだけど、やっぱりオリジナルの3より復刻の方が若干ボディが厚かった。例えばミノーのボディがコンマ2mm厚くなれば全然違って見えるわけで、このオリジナルと復刻のボディ厚の違いも、ぱっと見てすぐに気付いたよ」
リールのボディ厚が異なるということは、調節が必要になるのはサイドプレートを留めるスクリューの長さである。サイドプレート・スクリューに付属しているプラスチックの「スペーサー」が、そのボディ厚の差を調節する役目を果たしているのだ。
詳しくは取扱説明書にも記載されているが、03年のピュア復刻以降のモデルに関しては、必ずスペーサーを外して装着すること。スペーサーを付けたまま装着してしまうとサイドプレートが歪み、割れる原因となるのでくれぐれもご注意を。(オリジナルおよびオリムピック製復刻を使用の場合は、スペーサーを付けたままサイドプレートを装着)
ベールマウント・スクリュー
ベールマウントの取り付けスクリュー(ラインローラー側と反対側の2本)は、見ても分かるようにもともと頭の大きさに対して軸が細いため、締め付ける時にオーバートルクになりやすい。改めて言うまでもないことだが、装着時の注意点としてはスクリューを締め過ぎないこと。万が一スクリューが折れてしまうと、ネジ穴に折れ残ったスクリューの除去はひじょうに困難だ。
「軽量化の恩恵を受ける分、当然純正のスクリューよりも強度は劣るけど、適正なトルクで締める分には何ら問題ない強度だよ」
大きなドライバーを握りしめて…といった力はまったく必要なく、伊藤の表現を借りれば、「人差し指と親指の二本指でドライバーを回して締め付ける程度。指の力は個人差もあるけどね」。
ちなみにこのベールマウント・スクリュー、特にラインローラーの反対側が頭でっかちの形をしているのはご存知の通り回転のバランス取りが目的。ということは、ここを軽くしてしまうとそのバランスが崩れるんじゃないか? とも思いがちだが、伊藤の答えは明快。
「スクリューの軽量化によって回転のブレが気になるくらい、そんなに速くリールを巻くことって渓流である? ないでしょう(笑)。あるとしたらルアーを回収する時くらいだよ」
ドライブギアシャフト・スリーブ
ハンドルを外すと、ボディ側にインサートされているスリーブ。これは純正のパーツリストには記載されていない箇所になる。
今回リリースされる軽量化カスタムパーツは基本的に誰もが簡単に交換・装着できるものだが、唯一難儀するかもしれない部分がこのドライブギアシャフト・スリーブ。ボディ側に傷が付かないようビニールテープやマスキングテープ等をしっかりと巻いてから、ネジプライヤー等を使って引き抜くのだが、なかには復刻で外れにくい個体もある。もし無理そうな場合はもちろんイトウクラフトで相談を受け付けるので、一度ご連絡を。
またこの部分は、外した純正パーツに傷が付きやすいので、ノーマルの状態へ戻したい時のために代替パーツ「#07」が付属する。こちらは真鍮製で、粘り強く、滑りも良い。傷も付きづらい仕様だ。
カスタムパーツを装着することによって、きっとカーディナルにさらなる愛着が湧いてくるはず。そして軽量化のメリットをフィールドで実感すれば、この古い設計のリールがますます好きになって手放せなくなる。ぜひ、あなただけの愛機を今まで以上に可愛がってほしい。
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