イトウクラフト

TO KNOW CRAFTSMANSHIP

CRAFTSMANSHIP

TUNE-UP

Published on 2012/11/21

カーディナルを、
真の渓流スペシャルに
PART-Ⅰ

リールの進化

 渓流を釣る時、カーディナル3は伊藤秀輝にとって、絶対になくてはならない長年の相棒だ。古い道具への単なるノスタルジーではなく、実戦機としてがんがん使い込み、唯一無二とも言える「アップストリーム専用機」としての性能と価値を現場で見い出してきた。伊藤が提示してきた渓流アップストリームのミノーイングは、カーディナルがあればこそ完成されたと言ってもよい。

 その伊藤の手によって、カーディナルが新しい世界へ進む。

 伊藤いわく、「渓流のアップストリームを追究する上で今まで頼れる相棒となってきたカーディナルを、自分の手で、真の渓流スペシャルに進化させたかった」

 自ら作り出すカスタムパーツによって、自分の釣りを支えてきたカーディナルをさらなる高みへ。

 ロッドに装着した際のタックル全体の機能性をさらに高めるべく、伊藤はカーディナル用カスタムパーツの試作とテストを繰り返してきた。

 そのカスタムパーツの第一弾が、満を持してリリースされる。

写真)プロトタイプ

カーディナルを使う理由


 まずは、なぜカーディナルなのか? という所から話を進める必要があるだろう。

 シンプルで無骨なデザインの恰好よさやクラシックリールとしての価値はひとまず置いといて、その「性能」にこそ重大な意味、確かなメリットがある。だから手放せないのだ。

 これまでも雑誌やウェブで伊藤が何度か触れてきたけれど、サミングのしやすさはもちろんのこと、何と言っても、ハンドルを通して水中の情報を細やかに手元に伝えてくれるカーディナルならではの優れたリーリング感度が、伊藤の釣りを根底から支えているのである。

「ルアーの動きに1cmの無駄も作りたくない。そのためには、わずかな瞬間でも水中の情報が伝わらない状態を作りたくない。ミノーのリップが水を噛む感じ、微妙な水流の変化、そういう目には見えない水中の様子をきちんと正確に感じ取れるからこそ、思い通りにヒラを打たせて、一瞬一瞬の魚との駆け引きを次々と展開できるんだ。特にリップの抵抗を捉えづらいアップストリームの釣りでは、カーディナルがなければ本当に釣りが成り立たないよ」

 そしてまた、もともとパーツが少なくシンプルな構造ゆえの、丈夫さ、メンテナンスの容易さも、渓流という過酷なフィールドで使い込むには必要不可欠な要素だ。

「厳しい使用環境だからこそ信頼の置ける道具を持ちたい。もし何か不具合が起きても、すぐに直せるもの。車でもバイクでも昔からオフロードレーサーは現場でメンテしやすく出来てるでしょ。それと同じこと。リールで言えばそれがカーディナルなんだ。釣りのジャンルの中でも、我々の行く山岳渓流というフィールドは本当に過酷だと思う。車から遠く離れて、長時間山の中を歩く、でかい岩をいくつも乗り越える、岩壁をヘツって先へ進む、アップストリームの釣りと言ったらそういうフィールドだから、やっぱり壊れにくくて、何かトラブってもその場で修復できる構造じゃないと道具にならない。登山道具と一緒。リールが壊れたからと言ってすぐに車に戻れる場所じゃないからね」

 渓流、しかもアップの釣りを展開する上流部は、道具にとってとりわけシビアな環境なのだ。

「本流の釣りとは、また要求されるものが違う。今時の国産リールとか、ベアリングをたくさん配置したリールでは不安でしょうがない。みんなもよく経験してると思うけど、例えばメインギアやハンドルノブが砂を噛んでしまっても、カーディナルならその場で簡単に砂を洗い流すことができるでしょ。パーツの交換も簡単。厳しい条件下でこそ、このメリットが生きる。渓流で求められるフットワーク性をまったく損なわない、心から信頼できるリールだよ」

軽量化こそ、カーディナルにとって
最高のカスタム

 伊藤が手掛けるパーツは、言うまでもなく装飾品ではない。あくまでも実釣における機能性を突き詰めたものだ。その概要を伊藤に尋ねた。今回リリースされるカスタムパーツ群を装着することによって、カーディナル3および33シリーズは、どのように変わるのか?

「開発意図は、カーディナルの軽量化。本来カーディナルが持っている長所をそのままに、ロッドを含めたタックルのトータル・パフォーマンスをさらに向上させる。そのためにはこの軽量化こそ、カーディナルにとって最も有効なカスタムなんだ」

 これが長年カーディナルと共に歩んできた伊藤の解答。

 伊藤の言うカーディナルの最大の特長、渓流アップストリームにおいて『水中の情報を正確に手元に伝える』という本来のリーリング・パフォーマンスを生かすことが大前提になるので、それを生み出しているギアシステムはイジらず、もちろんメンテのしやすさも損なわない。ユーザー自らがカスタムパーツの換装を行なうだけで、タックル全体の機能性を高めることができる。そこにコンセプトがある。

 では、カーディナルの軽量化によって、僕ら釣り人は具体的に何を得ることができるのだろう?
(PARTⅡへ続く)