イトウクラフト

TO KNOW CRAFTSMANSHIP

CRAFTSMANSHIP

LURE

Published on 2007/07/17

蝦夷50S タイプⅡ

解説=伊藤 秀輝
聞き手=丹 律章

 関係者の間では、2年ほど前からその発売が噂されていた、蝦夷50Sの、ヘビーバージョンが「蝦夷50Sタイプ2」という名前でリリースされる。発売予定は8月10日。その新作ミノーの詳細を、イトウクラフト代表の伊藤秀輝に聞く。

──僕自身、その構想は以前から耳にしていて、いつ出るのか待ちわびたミノーですが、やっと発売になりそうですね。

伊藤:このミノーだけに集中できればもっと早く発売できたんですけど、やることがたくさんありすぎて、遅れに遅れてしまいました。

──8月10日は、間違いないのですか?

伊藤:……がんばります。

──まずはスペックから。通常の蝦夷は5センチで3.8g。シンキングモデルですが、タイプ2は同じ5センチで、重量が5g。実物を見てみると、リップの幅が違うようですが。

伊藤:そうですね。同じボディ形状で1.2gウェイトを増やしたわけですから、そのままだと、重量によって、ミノーの振り、動きというのが鈍くなるわけです。動かないミノーでは困るわけですから、リップの幅をコンマ4ミリ広くして、動きを出しています。気が付かないかもしれませんが、実は長さもコンマ5ミリ長くなっているんです。

──コンマ5ミリですか。0.5ミリですよね。それぐらいの違いでミノーの動きは変わってきますか。

伊藤:もちろんです。うちのインジェクションミノーは、プラスチックの限界を狙っていますからね。バルサ素材のミノーになると、ちょっと違う話になるんですが、プラスチックの場合はコンマ1~2という差が、大きな違いになってくるんです。

──ボディがほとんど同じということは、中に入っているウェイトで調整しているということですね。

伊藤:そうです。リップを含めないボディという意味では、最初からタイプ2の発売を視野に入れてボディを作りました。蝦夷で1.25g、タイプ2ではその倍、2.5gのシンカーがボディ内に入っています。それで総重量が5g。

──蝦夷タイプ2の開発で、苦労したことを教えてください。

伊藤:そうですね。5センチという小さいボディに5gという重さを持たせると、さっきも言ったとおり、動きが悪くなるんですね。必然的にそうなる傾向にはあるんですけれど、それを泳がせるのがルアーデザイナーというか、ルアーを作っている人間の力なわけです。技術力だったり経験だったりね。それでボディ形状とかリップとか、ウェイト位置を工夫して泳ぐミノーにしてあげるわけですが、今、市場に出ている、小さくて重いミノーを試してみると、その動きのバランスが悪い。

──バランスというのは?

伊藤:ミノーの動きというのは、キレと抵抗になるんですけど、あるミノーは、キレだけだったり他のミノーは抵抗だけだったり。片方しかないミノーがほとんどです。

──キレと抵抗というところについて、もう少し説明してください。

伊藤:キレっていうのは、簡単にいうとローリングですね。リップに受けた抵抗をローリングで逃がす。だからローリングだけだと、ほとんど潜らないミノーになりがちです。極端な場合、止水ではまったく泳がないミノーになって、流れの中でターンして水の抵抗を受けてから、泳ぐというルアーになります。実際にそういうルアーもありますけどね。そして、抵抗というのはウォブリング。抵抗をリップで受け止めてウォブリングするんだけど、それだけになると、逆引きでは重くてリールを巻くのも大変なルアーも存在するわけです。

──ということは、そのどちらかだけではダメだということですか。

伊藤:いろいろな考えがあっていいと思いますけど、私は、その両方がうまくバランスして、魚が反応する動きを出せると思っているんです。そのバランスがミノーの基本性能になっていくんです。ボディサイズに対して、非常に重量がある物体を無理やり泳がせるわけですから、その調整は微妙なわけです。水の流れをローリングで逃がす、もしくは抵抗をリップで受けてバスルアーのクランクベイトのようにウォブリングする。どちらかでいいなら比較的簡単です。どちらの動きも一つのルアーに持たせることが難しくて、でも必要なことだと思っています。ローリングもするし、ウォブリングもする。止水でも動くし、アップでもちゃんと動く。逆引きでも使いやすい。それを高次元でバランスさせることが、最も難しい作業でした。

──タイプ2の動きは、今までの50Sとは違うのでしょうか。

伊藤:ローリングとウォブリングのバランスは、まったく同じです。ただ、タイプ2のほうがちょっと派手な設定です。

──このルアーを使うフィールドは?

伊藤:重いミノーというのは、飛距離が出るし、早く沈むので、普通は本流をイメージすると思うんです。広くて深い本流ですね。小渓流なら全体的に浅いので使えないのではないかと。でも、タイプ2は渓流での使用も前提に開発してあります。うちで出している、ULXというロッドでタイプ2を使うのと、ULで今まで
の蝦夷50Sを使うのと、操作感はかなり近いと思います。もちろん飛距離が出るので遠くから狙えるし、立ち位置の選択の幅が多くなるというのも大きなメリットです。

──飛距離がでるので、長く魚を誘えるのもメリットですね。

伊藤:そう。しかも、沈みが早いから、狙った層に達する時間が短くてすむ。なおさら、長い距離誘えるということになります。

──沈みが早いというのは、深場にいるでかい魚を取るにも有効なわけですね。

伊藤:もちろん。沈み込ませて、そのタナで長い間誘えるのがタイプ2です。

──先ほど、タイプ2はULXのロッドなら普通に使えると言いましたが、逆に言えば、ULでは使いにくいということでしょうか。

伊藤:うちのロッドはULでも、ベリーパワーはあるので、ベリーを使うキャストをマスターすれば、問題はないと思いますが、全てにおいてULXの方が使いやすいのは事実です。

──たとえば渓流の大場所。水深があっていかにも大物が潜んでいそうなところ。そういうところではディープという選択もあると思うんですが、蝦夷50FDとの使い分けはどうなりますか。

伊藤:動きでいうと、ディープっていうのは、水の抵抗がないと泳ぎにくい。流れなり、リーリングなりね。でも、50Sとかタイプ2は、止めながらでも泳がせることができる。時間をかけて誘うことが可能になるわけです。しかも、ディープはフローティングなので、ハンドルを巻いて潜らせるわけだから、徐々に潜って、最高深度に達して、釣り人に近くなるとまた浮いてくるわけです。ところが、タイプ2は使い方によっては、ドボンと沈めて、足元まで深い層を誘うことが可能になる。この差は大きいですね。

──今回タイプ2では、伊藤クラフトの製品としては初めて赤バリを採用しました。これの理由を。

伊藤:魚が狂うんですよ。これは前から秘密にしてきたんだけどね。ここ5年のでかいヤマメは、全部赤バリに交換して、釣ってきたんです。

──ホントですか?

伊藤:……ウソ、ウソだよ(笑)。

──帰りに釣具店で赤いハリをたくさん買って帰ろうかと思いましたよ(笑)。

伊藤:タイプ2は、蝦夷とボディ形状が一緒でしょ。リップがちょっと違うだけで。だからルアーケースから取り出すときに、ハリの色を変えておけば迷わないかと思ってね。重さが違うから分かると思うけれど、より分かりやすくね。

──確かにそれは分かりやすい。

伊藤:大急ぎで出荷に間に合わせるつもりです。間違いなく秋のシーズンには間に合いますから、これででかいヤマメをがんがん釣ってほしいですね。  FIN

【ライターの付記】
 タイプ2は、ずっと前から開発の予定だけ聞かされていて、今年の5月にやっとプロトを見せてもらったんです。使っていないので何ともいえませんが、今までよりちょっと深い層を狙いやすいことは事実でしょう。
 このサイトでも何度か書いてますが、毎年ゴールデンウィークとお盆には盛岡で伊藤さんと釣りをしています。去年は確か目の前で38センチのヤマメを釣られたっけ。今年の夏こそは、このタイプ2でボトムにいるでかいヤマメを釣りたいですね。