CRAFTSMANSHIP
LURE
Published on 2026/03/17
「ムッチムチボディの可愛い子」
蝦夷50FD “復活”の狙いを聞く
解説:伊藤 大祐
蝦夷50FD スペック
全長=50mm、重量=4.0g、価格=1,848円(税込)
リメイクされた蝦夷50FDのコンセプトに関して、イトウクラフトのデザイナーである伊藤大祐に話を伺った。
“復活”の理由
――いきなりですが、2026年6月に「蝦夷50FD」が復活。今このタイミングで復活した理由を教えてください。
渓流でスレている魚に口を使わせるには、わかりやすく分けると「レンジ」「姿勢」「食わせの間」の3つが高いレベルでそろっていることが最低条件です。蝦夷50FDは、この3要素を高水準で、しかもバランスよく実現できます。
さらに、PEラインが渓流釣りの主流になったことで、ルアーの操作をより細かく調整しやすくなりました。こうした現代の釣り環境の変化に、従来の蝦夷50FDの実績が加わり、今の釣りのテンポに合った「現場で違いがわかる品質」に仕上げることができた。
その結果、狙いどおりのアップデートにつながり、“復活”という形になりました。
――「ムッチムチボディの可愛い子」って、キャッチーだけど妙にしっくりきますね。
サイズは一般的な50mmですが、上から見ると丸々と肥えたファットボディです。実は「わがままボディ。蝦夷50FD」と付けたかったのですが、私が意図していた意味と違っていました。
「わがままボディ」は「ボン・キュッ・ボン」という体のラインを指す言葉だったので、採用しませんでした。この子は「ボン・ボン・キュッ」なので。
ルアーの基本情報(サイズ・ウエイト・構造)
――基本スペックを改めて教えてください。
全長50mm、ウエイトは4.0g。タイプはフローティングのディープダイバーで、内部ウエイトにはミッドシップウエイト(M.W.S)を採用しています。
――このサイズでディープ、というのが渓流では刺さりますよね。
そうなんです。淵・えぐれ・落ち込みの反転流など、魚が「深さ」と「流れの変化」に付く場面は多い。そこで、狙った筋に“しっかり入れて通せる”ことを目指して設計しました。
渓流で本当に大事なのは「悪条件下」の挙動
――一般的なディープミノーは、ただ泳ぐだけのものも多いと思います。蝦夷50FDは?
渓流はルアーにとって意地悪な条件が頻発します。たとえば、流れに押されて角度が崩れる、岩の間を抜ける瞬間に姿勢が乱れる――そういったことが起きやすい。
こうした「悪条件下」では、ヘッドの入り方、崩れた姿勢の復元、次のアクションへのつながりが釣果を分けます。蝦夷50FDは、ディープダイバーとしてのレンジ性能を土台にしつつ、トゥイッチ・ジャーク・ステイの一連を“詰まらず”サイクルできることを重視しています。
核となる設計思想:「レンジ」「姿勢」「食わせの間」
――その3つを、もう少し噛み砕いて教えてください。
まず「レンジ」です。ディープダイバーとして、淵やえぐれ、落ち込みの反転流など、魚が「深さ」と「流れの変化」に付く場所で、狙った筋へしっかり届くよう設計しています。
そのうえで重要なのが「姿勢」。渓流では、流れに押されたり、岩の際を抜けたり、ラインテンションが一瞬抜けたりして、条件がすぐ悪くなります。そこで、姿勢が崩れて終わりではなく、ヘッドの入り直しや姿勢復元がスムーズで、次のアクションにつながることが釣果に直結します。
また、ルアーと釣り人の距離やロッドの高さによって、ラインアイとラインの角度は変わりますが、近距離でも安定した姿勢を保てます。
最後が「食わせの間」です。トゥイッチやジャークで“見せて”、ステイで“一瞬止める”。フローティングディープの蝦夷50FDは、この止めを入れやすく、ヤマメやイワナに食わせるタイミングを作りやすい。
つまり、
「深さへ入る」→「崩れにくく戻る」→「止めで食わせる」
この一連をテンポよく成立させるために作っています。
――近距離でも安定した姿勢、というのは嬉しいポイントです。
渓流はフルキャストできる条件ばかりではありません。近距離のピン撃ちでも安定して動いてくれないと、釣りのテンポが崩れます。その点も設計の前提に入っています。
改良点:「見た目はそのまま、使うと違いが分かる」
――今回の改良のテーマがすごく気になります。どこが変わったのですか?
性能面では大きく3つです。
・ヘッドの入りを改善:水を掴む初動が整うと、狙いのレンジへ入りやすく、トゥイッチやジャークの“かかり”も良くなる。
・トゥイッチ/ジャークとの相性を強化:アクションの切り替えがスムーズだと、渓流ミノーイングの基本サイクルをストレスなく回せる。
・ウエイトバランス調整でキャストの扱いやすさを確保:外観サイズ・形状は変えず、投げ感と安定性を両立させた。
――形状は変えず、ということはリップ角度も変えていないんですか?
はい。リップ角度を変えると空気抵抗やキャストフィールが変わりやすくなります。一般的に潜りやすくするならリップ角度を前下がりにしたくなるのですが、それをすると飛距離が大きく落ちます。特にフローティングミノーは影響が出やすく、風にも弱くなる。
だからこそ、従来の蝦夷50FDのキャストフィールは変えずに、流れの中では「魚の反応が出やすい」方向へ調整しました。
“実釣テンポ”へのこだわり
――大祐さんは、釣りのテンポにすごくこだわっていますよね。
そうですね。ロッドやルアーの性能を考えるうえで、私は「釣りのテンポ」をいちばん大切にしています。ここでいうテンポは、単なる“速さ”ではありません。狙いどおりにルアーを動かし、魚の反応を見ながら次の一手へ迷わず移っていける――その一連の流れが気持ちよく繋がること。それが私の考えるテンポです。
たとえば蝦夷50FDは、水の流れが強い場所でも弱い場所でも、ルアーが細かく姿勢や動きを保てるように設計しています。流れに対してルアーの状態が安定していれば、釣り人は操作に迷いません。迷いが減ると、次の操作へスムーズに入れて、釣り全体のリズムが崩れにくくなる。つまり、テンポが続くんです。
また、このタイプのルアーには5ftのロッドが合うと考えています。5ftロッドで心地よく振れて、テンポよく操作を繰り返せること。そのためには、引き抵抗が強すぎないことが重要です。私は引き抵抗にもこだわっていて、川の大きさに対して抵抗が強すぎるルアーはあまり好みません。引き抵抗が強いと、操作が重くなったり、攻め方の選択肢が狭まったりして、釣りの組み立てが単調になりやすいからです。テンポよく「探って、見せて、間を取って、次へ」という流れを作るには、軽快に扱える余白が必要だと思っています。
流れの中でテンポを崩さないために、蝦夷50FDでは次のようなイメージを重視しています。
・速い流れ:姿勢が崩れにくい → 次のトゥイッチへ移行しやすい
・弱い流れ:動きが死なない → ステイの“効き”を出しやすい
結果としてリメイク版の蝦夷50FDは、「普段どおりの投げ感・操作感のまま、流れの中で反応が増える」。その体感を狙っています。テンポよく組み立てられるからこそ、同じ操作でも流れの中で“釣れる場面”が増えていく――そういうルアーにしたかったんです。
「潜らせて、短く動かして、止める」
――基本的な使い方を教えてください。
とてもシンプルです。
基本手順
・キャスト
・潜らせる
・狙った筋に入ったら、小さく短いトゥイッチ
・そして一瞬止める(ステイ)
この“ステイ”が、フローティングディープならではの強みです。ヤマメやイワナに「食わせの間」を作りやすい。
――反応に合わせて調整するにはどうすればいいですか?
魚のスレ具合でアクションを臨機応変に調整する必要はありますが、初心者の方は、まず下記を試して魚の動きや出方を研究してみるといいと思います。
・追うけど食わない:ステイを少し長く/たまにアクションを大きく
・見切られそう:ヒラ打ちを強める/ダートを混ぜてスイッチを入れる
・川の流れが複雑:短いトゥイッチ+短いステイを速いピッチで繰り返す
蝦夷50FDは、ディープでもヒラ打ちがしやすく、大きなアクションでダートします。「深さを攻めながら、操作で見せて、止めで食わせる」釣りがしやすいルアーです。
さらに、アクションを入れるときにロッドを立てたり寝かせたりするとバリエーションが増えて、より楽しめるでしょう。蝦夷50FDは、アングラーの意図にしっかり応えてくれるルアーです。ぜひ、渓流ミノーディープマスターを目指してください。
もっと深く攻めたいなら:「蝦夷50SD」という次の選択肢
――さらに深いレンジを攻めたい場合は?
同系統のシンキングディープモデル「蝦夷50SD」も選択肢に入れてほしいのですが、現在リメイク発売に向けて再構築中です。販売まで、もうしばらくお待ちください。
最後に:蝦夷50FDは「次の一手」を増やす道具
――最後に、このルアーをどんな存在として使ってほしいですか?
渓流は変化が多いフィールドです。蝦夷50FDは、深いポイントを攻略するだけでなく、ヒラ打ちの入れやすさ、キャストのしやすさ、そして一連の動作をスムーズにつなげることを目指しました。
ボウイ50Sが渓流の定番となっているなか、最近登場したバルサ蝦夷50S、そしてリメイク版の蝦夷50SIIに続き、蝦夷50FDも“頼れる最強の武器”になれる。そんな存在でありたいと考えています。
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