CRAFTSMANSHIP
ROD
Published on 2007/01/24
進化する竿
PART-Ⅰ
エキスパートカスタム×伊藤 秀輝
インタビュー=丹 律章
イトウクラフトが正式にエキスパートカスタムの販売を始めたのが2002年。発売当初、店頭でそのロッドを手にした釣り人から、こんな声が聞かれた。「硬くない?」。当時のトラウトロッドはスローテーパーのものがほとんどで、エキスパートカスタムほど張りをもたせ、なおかつファーストテーパーのロッドは存在しなかった。しかし今、エキスパートカスタムは多くのトラウトフィッシャーマンに支持されている。
──エキスパートカスタムは硬いという意見があります。
伊藤:管理釣り場のロッドに比べたら硬いと思うし、自然フィールド用のロッドでもカスタムより軟らかいロッドがあるのは事実でしょう。でも、私自身は硬すぎると思っていません。私は今までいろいろなロッドを使ってきて、もちろん最初は市販品で、それに飽き足らなくなって自分で作るようになって、そういう経験の上に今があります。カスタムのあのアクションには理由があるんです。
──他メーカーには見られない硬さの理由は、簡単にいうとなんですか。
伊藤:キャスト、ルアーのアクション、フッキング、その能力です。その3つを自分なりに突き詰めていった結果、こういうロッドができたんです。
伊藤が確信を持って送り出すエキスパートカスタム。しかしここに至るまでには、いろいろなトライがあり、もちろんエラーもあった。エキスパートカスタムの性能に言及する前に、現在までに伊藤が使ってきたルアーロッドについて聞いてみた。
──まず最初に使ったルアーロッドはなんでしたか。
伊藤:10代のころに使ったのは、最初はガルシア。ペナンペナンのロッドでした。次に使ったのはフェンウィックですね。これもかなり軟らかかった。まだ道具も今ほど選択肢がない時代で、こっちとしてもそのロッドが優れているから使うというより、イメージで買っていたんです。アブとかガルシアとかフェンウィックなんていうのは、大人が使っていて、憧れのかっこいいブランドだったわけだから。次がウエダのスーパーパルサーですね。日本製でもこういうロッドがあるんだって使ってみました。悪くないんだけど、でも、当時はグラスロッドで、釣行の頻度が多いもんだから、ワンシーズンに3本くらいダメになってしまうんです。へたっちゃって。まあ、ロッドも1万円しなくて安かったから負担はそれほどでもなかったんですけど、ちょっと困ったこともありました。
──どういうことでしょう。
伊藤:仮に、3月からそのロッドを使い始めたとするでしょう。新しいやつを。最初はしゃきっとしてるから、使いやすいんですけど、使っているうちにへたってくるから、使い始めて2ヵ月後には違う竿になっちゃうんです。しかも突然変わるわけじゃないから、徐々にへたっていく竿に釣りの方も慣れてくるでしょ。だから2ヵ月後に一番へたった状態の竿から新しいしゃきっとした竿に持ち替えると違和感があるんですよ。
──なるほど。ではそろそろカーボンロッドが登場しますか。
伊藤:そうですね。ウエダのCS2ていうカーボンロッドがあって、これは全体に硬い竿だったんですよ。当時は、まあ私の知っている範囲で言えば、ベナンベナンの竿か、ガチガチの竿しかなかったんです。ミスタードンっていうのも当時出始めたけど、これも軟いロッドでしたね。
──CS2が硬い竿だったということは、しゃきっとして良かったんですか。
伊藤:ところがね、全体的に硬かったんです。バットやベリーはもちろん、ティップまで硬い。ティップが曲がらないもんだから、ピンスポットに入れるのは難しかったですね。だからもっとティップアクションのロッドがいいと思って、グラスのスーパーパルサーのティップを無理矢理CS2に移植して使ったりもしていました。今思えば、市販のロッドに不満を持ち始め、ロッドのチューンを始めたのはそれが最初です。これもこれで難しくて、切断する部分が1センチ違えば、全く違う竿になっちゃいましたからね。その後は時代的に多くのメーカーがロッドをリリースし始めて、さまざまなロッドが釣具店に並ぶようになって、いろいろ使ってみましたね。
──僕が最初に会ったとき、伊藤さんはスミスの「トラウティンスピン」のパックロッドを使ってました。
伊藤:そうそう。そうでした。あのロッドもスローなアクションでしたね。それで丹君と会って、雑誌の取材を受けるようになって、もっと釣りのことを真剣に考えないとダメだと思ったんですよ。それがロッドのことも突き詰めて考えるきっかけになったんです。当時市販されていたロッドのほとんどは、小さい魚だとそれほどでもないんだけど、尺を超える魚をかけると、バラシが多発したんです。それでロッドにも原因があるんじゃないかと思ったんです。せっかく大きい魚をかけても捕れないのでは自分自身も納得できないし、せっかく来てもらっている雑誌の人間にも申し訳ない。もしかしたら、取材とかを受けることがなかったら、「釣りっていうのはこんなもんでしょ」って済ませていた問題だったかもしれない。でも、責任みたいなものが生まれちゃったから……。自分自身納得できる竿が欲しいと思って、試しにてブランクで買って組んでみたんです。
──ブランクはどこのものでしたか。
伊藤:Gルーミスです。
(以下PART-Ⅱへ続く
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