イトウクラフト

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FIELDISM
Published on 2013/02/13

遡上アマゴと山夷50SタイプⅡ

2012年春から初夏にかけて
アングラー・写真=小沢勇人
文=佐藤英喜

 小沢さんの住む長野県茅野市の冬は、まさに冬らしい厳しい寒さに見舞われる。雪はそれほど多く降らないのだが、そのぶん放射冷却による冷え込みがきつい。当然、山は氷の世界になる。


「毎年2月16日に渓流釣りは解禁するんだけど、初期の釣りは魚を狙いに行くっていうよりは、川や自然に浸かりに行くっていう気分だよね」


 解禁当初はまだ川も魚も冬の眠りから覚めていない感じだ。


「イワナは別として、大きなアマゴほど動き出すのが遅いから」


 小沢さんが本格的にいい魚を狙い始めるのは4月半ば頃。雪シロは少ないので、ひとまず暖かくなれば状況は次第に上向いていく。


 そしてその時期に狙うのが、遡上系のアマゴ。

ギンケした太いボディ。重量感のある39.5cm

「シーズン序盤にいいサイズを狙うとしたら、やっぱり遡上系の個体になると思う。本当なら、遡上してきたタイミングとか水の条件が合えばそれほどシビアな釣りではないし、実際以前はそういうラクな釣りもできた。でも今はね、釣り場の様子がその頃とは全く変わった」


 釣り人の数が劇的に増えたのだ。


 長年通い慣れた地元河川でも、堰堤下のプールや綺麗に筋の通ったトロ瀬、そういう誰もが攻めやすいポイントには簡単に入れなくなった。タイミング的に好条件であればなおのこと釣り場は混雑する。


「だから、ちょっと攻めづらいようなポイントをいかに釣るかが重要になるよね。流れがすごく複雑だったり、押しが強かったり、食わせづらいスポットに魚が着いてたり、そういう難しさを克服しながら釣っていかないと、なかなか釣果には結びつかない」


 シーズン初めの渓通いが徐々に熱を帯び始めてきた昨年5月、ルアーケースには新たな武器が入っていた。山夷50Sのウエイトアップバージョン、山夷50SタイプⅡだ。昨シーズン、これが小沢さんの圧倒的な釣果を支えたルアーのひとつになった。


 山夷50SタイプⅡの性能についてはこのウェブ上でも動画をまじえながら度々紹介しているが、どんな流れにも対応する高い安定性が、釣りの展開を非常にラクにしてくれる。


 小沢さんも、その点を現場で強く実感したという。


「川の流れはポイントによって本当に千差万別で、特に増水気味の流れをサイドクロス~ダウンで探る時っていうのは、1トレースの中でいろんな強弱の流れをミノーがもろに受けるよね。山夷50SタイプⅡはそういう複雑な流れに揉まれても、着水からピックアップまで、コケたり浮き上がったりしないで綺麗に泳ぎ切ってくれる。だから、どんな流れにも邪魔されず思い通りの誘いを展開できるのが強み。例えばチェイスしてきた魚に対して、あと1回ヒラを打たせて止めれば食う、という所でちょうど押しの強い流れがぶつかってミノーがバランスを崩してしまう…っていうこともない。そして、それだけの安定性を持ちながらトゥイッチに対するレスポンスもいい。これは絶対に重宝するよ」


 また加えて、飛行姿勢が良く飛距離も稼げるため、渓流域から本流までいろいろな釣り場でオールラウンドに使えるのも大きな特長だ。川で出会う様々なポイントをテンポ良く探り、効率良くバイトを拾っていくには打って付けのミノーである。


 5月下旬のある日、山夷50SタイプⅡを手に小沢さんはとあるポイントに目を付けた。


 ガンガン瀬から続く流れが絞られるようにまとまって対岸にぶつかっている所。流れは速く複雑で、底からの湧き上がりも強い。魚がいるだろう場所に狙い通りにルアーを持っていくのが難しい流れで、ルアーが浮き上がりやすく、泳ぎも殺されやすい、という攻めづらいポイントだった。山夷50SタイプⅡの安定性とレンジキープ力を最大限に生かして、底波に入っているだろうアマゴを誘う。


 2、3投しても反応はなかったが、そのポイントに確かな気配を感じ取っていた小沢さんが丁寧に攻め続けると、およそ10投目、トゥイッチでアクションを加えたミノーに『カツンッ』と軽いアタリを感じた。アワセと同時に魚が猛烈に抵抗を始め、「40クラスか?」と思わせるトルクフルなファイトを繰り広げた。もちろんフッキングは完璧。イメージ通りの展開でネットに太い魚体が収まった。


「釣り上げてみたら40cmはなかったけどね、体高があって顔付きもカッコイイ。この川の遡上アマゴは自分にとって馴染み深い魚だし、毎年ここから本格的な渓流シーズンが始まる。この魚を見て、さらに気合いが入ったよ(笑)」


 ハッとするほど見事なプロポーションで、サイズは37cmだった。

5月下旬に釣り上げた遡上アマゴ、37cm。背中の盛り上がった雄。ロッドはEXC510ULX

 そしてこの魚の他にも、昨年小沢さんは山夷50SタイプⅡを駆使して何尾もいい魚を釣り上げた。

  1. 地元から少し離れた本流での釣果。これまた幅広の34cm。ロッドはEXC600ULX

 昔に比べれば、ひっきりなしに訪れる釣り人の猛攻により魚の反応は渋くなった。思うようにポイントも選べなくなった。それでも魚と出会うチャンスは今もみんなに平等にあるのだ。それを手にできるかどうかは、いつだって僕ら釣り人にかかっているのである。

TACKLE DATA

ROD Expert Custom EXC510ULX,600ULX/ITO.CRAFT
REEL Cardinal 3 /ABU
LINE Super Trout Advance series 5Lb /VARIVAS
LURE Yamai 50S Type-Ⅱ/ITO.CRAFT
LANDING NET North Buck/ITO.CRAFT

ANGLER


小沢 勇人
Hayato Ozawa

イトウクラフト フィールドスタッフ

1965年長野県生まれ、長野県在住。茅野市在住のトラウトアングラー。野性の迫力を感じさせる渓流魚を追って、広大な本流域から小渓流まで、シーズンを通して釣り歩き、毎シーズン素晴らしい魚達との出会いを果たしている。地付きの魚であり、少年時代からの遊び相手であるアマゴに対してのこだわりも強い。