FROM FIELD
大和 博
FIELDISM
Published on 2009/07/17
御所湖のアメマス
2009年4月9日
アングラー=大和 博
写真と文=佐藤英喜
例年3月1日に解禁する雫石川水系だが、春の遅い北国のフィールドにあって、シーズン初期からサイズの狙える有り難いトラウトが「アメマス」である。御所湖の水で育った30cm後半から40cm台の美しい魚体が、上手くタイミングとポイントを読むことができた釣り人の手に収まるのだ。
地元釣り師のひとり、大和博は4月9日、御所湖の岸辺でロッドを振っていた。毎年欠かさず春のアメマスを狙う彼の頭には魚を釣り上げるまでの道筋がかなり明確に浮かんでいるのだが、逆に言うと、こういう広大な釣り場では何か確信めいたものがないとなかなか集中力が続かない。
「各ポイントには居着きの魚もいて、それらは35cm位までかな。でも、ワカサギを追いかけて回遊してるヤツらはサイズがいいんだ。ポイントはその年の貯水の状態によっても変わってくるし、今年みたいに水が多いときには、せっかく魚を掛けても水没した柳に逃げられるようなこともあるからそうした場所をきちんと頭に入れておくことも大事だよ」
大和のタックルについては、ロッドがエキスパートカスタムEXC600ULX。例えば小規模河川でのサクラマス釣りにもぴったりハマるモデルで、トルクのあるパワフルなブランクに、高いキャスタビリティとミノーの軽快な操作性を与えたシングルハンド・グリップの6ftだ。それにセットするカーディナル3には6Lbラインを巻き、蝦夷65や山夷68といった中型ミノーを手返し良くキャストする。
釣り場の規模だけを考えればもっとヘビーなタックルで広く探りたい気もするけれど、アメマスのアベレージサイズや釣りのテンポを考えると大和のタックルバランスがちょうどいい辺りと言えるし、なにより彼は、このタックルで十分ルアーの届く範囲まで、つまりすぐそこにあるカケアガリまで、アメマスの群れが回ってくることを知っている。
「ワカサギが寄ってくると、水面の波紋でわかるんだよね。それを待ってる感じ」
そのポイントに大和が入ったのは午前10時頃。アメマスからの反応はないまま時間が過ぎ、彼の言う波紋が見え始めたのは夕方近くになってからのこと。
水面でワカサギを捕食しようとする数匹のアメマスの姿も見えた。そしてそのうちの1匹か、それとも違う魚か、それは不明だが、雫石で長く釣りをしてきた大和にとって最大のアメマスとなる魚が底の方から突然現れ、すぐそこのカケアガリで躊躇なくミノーにアタックした。
「竿先から2m位のところでドンっと来た。いままで釣ったなかでは51cmが一番大きなアメマスなんだけど、それとは全然パワーが違ったよ。ものすごく強かった」
激しく暴れる魚を必死になだめながら、どうにかこうにか釣り上げたアメマスは55cmのトロフィー。いかつい表情をした雄のアメマスだった。
以前の記事でも触れているように、御所湖がまだ存在しなかったころの雫石川にはとてつもない大きさのアメマスが海から上ってきていた。おそらくそれは確かだ。
そしていま、御所湖ではどれほどのアメマスが育っているのだろう。
55cmの次に浮かぶのは、やはり「60cm」の可能性だ。大和は、「いるとは思う」と言う。それが自分のルアーに食いつくかどうかは別の話だとしても、その瞬間を思い浮かべながらルアーをキャストする。ヒットした60cmがラインの先で盛大に水飛沫をあげて暴れる光景が、これまでにないリアリティーを帯びたことは間違いない。
TACKLE DATA
ROD | Expert Custom EXC600ULX/ITO.CRAFT |
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REEL | Cardinal 3/ABU |
LINE | Super Trout Advance VEP 6Lb/VARIVAS |
LURE | EMISHI65S/ITO.CRAFT |
ANGLER
1958年岩手県生まれ、岩手県在住。岩手県の雫石町で、濃密な自然に囲まれて育った釣り人。御所湖ができる前の驚異的に豊かだった頃の雫石川を知る生き字引でもある。山菜やキノコといった山の恵みにも明るく、季節ごとの楽しみを探しに頻繁に森へ通っている。川歩きと山歩きの長い経験が彼の釣りの基礎を形成する。