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「小渓流専用、42㎜のボウイ」
解説=伊藤大祐
まとめ=丹 律章

イトウクラフトの渓流用小型ミノーは、蝦夷や蝦夷ファースト、山夷など数種類ラインナップしているが、中でもボウイ50Sはテスターからの評価も高い傑作ミノーだ。
そのボウイに、新しいサイズが追加されるという。新作ミノーにはどのような特徴があるのか、コンセプトについてルアーデザイナーである伊藤大祐に聞いた。

――まずは新作ミノーのスペックを聞かせてください。

「商品名はボウイ42S。サイズは42㎜、2.8gです。カラーは4色で、価格は税抜きで3,190円、発売は2018年12月を予定しています」

――既存のボウイよりひと回り小さいルアーですが、これはどんな状況を想定して作ったのでしょう。

「ヤマメやイワナを釣る渓流には、本流に近い大きめの渓流もあれば沢とか源流部の小渓流もあります。ボウイ50Sは一般的な渓流向けで、新しいボウイ42Sは小渓流に特化したミノーとなります」

――小渓流用のミノーを新しく作ったということは、必要性を感じていたということだと思うんです。50㎜ではどこかに不満を感じていた。それはどういう部分でしょうか。

「まず、小さい川は水深が浅いので、ボウイ50Sだと重いのでレンジが深すぎるんです。しかも重心が後ろにあるのでレンジキープに気を配ることになってしまいますし、魚に口を使わせる『間』が短くなってしまうんです。それと、弊社も他社もそうだと思うんですが、渓流用のミノーは50㎜が定番化していて、そのサイズのミノーに対してヤマメが慣れているというかスレているような気がするんです。50㎜の物体が水中を泳いでいるだけで警戒するような。その警戒心を解いてやるために、ちょっと小さなサイズというのは有効なんじゃないかと思うんです」

――レンジの問題なら、ボウイ50Sの軽量バージョンという案はどうでしょう

「そう簡単な話でもないんですよ(笑)……ボウイはバルサ材でできているんですが、浮力の強いあのサイズのバルサのボディに対して、現在入れてあるウエイトとのバランスがとれていて、結果4gという全体の重量になっています。ウエイトを軽くしちゃうとそのバランスが崩れてしまうんです」

たとえばボウイのウエイトを1g削って、全体で3gのボウイを作ったとしても、同じ動きは出ないし、空気抵抗は変わらないから飛距離も落ちることになる。軽いボウイを作るには、新しいボディデザインが必要だったということなのだ。

――50㎜よりひと回り小さい42㎜になったわけですが、40㎜でもなく45㎜でもなく42㎜だった理由は何でしょうか。

「50Sより小さくて軽いボウイを作ろうというところから始まって、まずは38㎜から1㎜刻みで44㎜まで7サイズのプロトを作って、その7サイズに対して2.4g、2.8g、3gのバリエーションと、重心位置を変えて全部で5パターン、7×5で35種類のプロトを作ったんです。その中で、動きや操作感、飛距離などが一番良かったのが42㎜の2.8gだったので、それをベースに微調整をしていったわけです」

――ボウイの50Sは4g、42Sは2.8g。その差は1.2gもあります。やはり飛距離は犠牲になっていると予想されますが、その点はどうですか。

「本流とかオープンな場所で比べたら、50㎜のボウイと42㎜とでは差は出ると思いますが、小渓流ならサミングするわけだし、常にフルキャストの釣りをするわけではないので、差はあまり感じないと思います。これは2.8gという微妙な重量設定がキモで、これが0.4g軽い2.4gになるといざというときに遠投がぐっと難しくなってくるんです。それと、4gのミノーに比べると飛行速度が遅めなので、ルアー軌道を目でしっかり確認できて飛距離をサミングで調整しやすいという長所もあります」

――アクションはボウイ50S譲りのヒラウチと思っていいでしょうか。

「そうですね。それは共通した設定ですが、42の方が、ショートインパクトの連続トゥイッチングに適した設定となっています」

ショートインパクトとは、トゥイッチングの際にリップに力を加える場合の強さがより小さく、一瞬だけ負荷をかけるという意味だ。小さな力だけでルアーがレスポンスしてくれるならば、ラインスラックは最小で済むし、糸ふけが少なければアワセも効きやすいということになる。ボディが小さく軽量である点も有利に働いているだろう。

「水なじみという部分でもボウイに共通した特徴を持たせることができました」

――水なじみ? それはなんでしょうか。

「言葉で説明するのが難しいんですが……川の流れというのは複雑で、上流から下流へ均一に流れているわけじゃないじゃないですか。川底には石があるのでさらに複雑で、だから水中を泳いでいるミノーはいろいろな方向から流れを受けることになります。そういう流れを受けた時に自動的にミノーが反応して欲しいんです。テール部分に流れを受けて少し傾くとか。あの……アップで釣りをしていて、上流から下流へミノーをチェイスするヤマメがいますよね。彼らは、常に体を流れと平行にして体をまっすぐにして泳いでいるわけはなくて、時には斜めにひねりながら泳いでいることもある。ああいう姿勢をミノーにさせたい。斜め後方からの流れを受けて、お尻を振って、肩が入るような……」

――肩が入る? また新しい表現ですね(笑)。

「これも僕が勝手に言っている表現ですが、平べったいボディが右か左に傾いて、ミノーの肩が流れに入っているイメージですね」

――ミノーに肩があるとして、その肩の位置の特定も難しそうですが、まあそれは置いといて、そんな自然な動きをミノーにさせたいということなんでしょうね。

「そうすることで、見切られにくくなると思うんです。バルサでボディを作ってリップ付けたからブルブル動きますってだけでは、釣り人側が攻めのバリエーションを多く作れないじゃないですか。そういう操作性の悪い機械的な動きは好きじゃないし、ウォブリングだけとかの性能だと本当にスレスレのヤマメには効かないんです」

――大祐さんがルアーのデザインの全てを任されるようになったのは、7年くらい前で、代表作はやはりボウイ50Sということになります。今後はどんなルアーを作っていく予定でしょうか。

「それこそプロトというのは山のようにあるんですが、多方面の作業を並行してやっているので、なかなか進まないのが現状です。ボウイ42と並行して開発していたサクラマスミノーの2種類もやっと完成して、今年中に発売できるかどうかっていう状態です。これに関しては、近々このホームページで詳細を発表したいと思っています」

――サクラマスミノーが完成して、今は何を作っているんでしょう。

「現在、最も力を入れてテスト中なのは、渓流用の新しいインジェクションミノーですね。50㎜とそれより小さい45㎜くらいのをテスト中です」

――ボウイのようなバルサではなく、プラスチック樹脂を素材に選ぶと、素材自体が重くて、浮力は中空部分に頼ることになりますから、バルサミノーとは全く別のものになりますね。

「インジェクションは動きの切れという部分でバルサには劣る部分があって、左右の切り替えの部分がどうしてもモヤっとしてしまう。それをどう補っていくかも難しい部分です」

――サイズが小さくなると、中空部分が少なくなって浮力が問題になります。

「浮力を確保するためには断面を丸くしたり体高をあげたり、中空スペースを大きくとればいいんですが、それにも限界があるし……比重が軽くて強度があるプラスチック素材が出てくれば面白いんですが、そんな都合のいい発明もないし。自分の理想に近づくよう、頑張っているんですがまだ発売時期は見えません」

――2019年の春に間に合いますか(笑)?

「勘弁してくださいよ(笑)」
 

「進化したシンキングバルサ、ボウイ50S」 PARTⅠ  
2012.09.15 解説=伊藤大祐

【ボウイ50Sに求めた性能】
◎キャスティング性能
特にカスタムのULXでバルサ蝦夷を使い込んでるうちに、キャストにストレスを感じることがあった。もっとラクに飛距離が出せて、ピンスポットに簡単にコントロールできたら、さらに釣りが楽しくなるだろうなと。ロッドがトルクのあるULXでも、丸一日キャストにストレスを感じずに楽しめるバルサミノーを作りたかった。渓流釣りは何と言ってもキャスト回数の多い釣りだし、ボサのキワをずっと打ち続けていく状況もある。キャストが決まるかどうかで、楽しさも釣果もまったく変わってくる。バルサは浮力がある分どうしても失速しやすいけど、ボディ形状、リップ、ウエイト、全体のバランスによって飛行姿勢を良くすることで、バルサの泳ぎの面でのメリットを生かしつつキャスティング性能に優れたミノーを目指した。

◎レンジ
バルサ蝦夷のレスポンス性能は確かにすごく有効で、魚とのレンジがある程度離れていても下層から魚を誘い上げる力もある。でも、ヤマメのスレがどんどん増してる今の状況では特に、あと10㎝、20㎝下を通したいって時も少なくなかったし、ヘビーシンキングを使い慣れた釣り人にとっては余計、バルサ蝦夷の沈まなさというのはストレスだったかもしれない。ボウイ50Sは、尻下がりの沈下姿勢によってフォールスピードを速めて、なおかつ連続トゥイッチに対しても浮いてこないセッティング。しかも、ラインの操作次第でフォール時にゆらゆらと背中を揺らすような誘いも演出できる。イメージとしてバルサ蝦夷より20㎝下のレンジを探る感じだけど、ライン操作などによって思い通りにレンジコントロールがしやすい。これもキャスト同様、ストレスなく釣りを楽しむための大事な要素だと思う。ただ、結局ボウイも、3mも4mもある淵の底を釣ることはできないわけで、とことん深場を探るためのものじゃない。バルサ蝦夷よりもラクにレンジを下げられて、浮いてこないで、それでいて、底からの魚を上げる泳ぎも持っているミノー。バランスの良さでいろんなシチュエーションに対応できるのが大きな特長。

◎ヒラ打ち
バルサ蝦夷よりも泳ぎのピッチを細かくして、ヒラも多く打たせられる。バルサ蝦夷の泳ぎも十分細かいけど、ボウイはさらに細かい。より少ない抵抗で水を噛んで機敏に反応して、なおかつ起き上がりが早い。それほど神経質にならずにヒラを打たせられるし、操作次第でそのバリエーションも豊富。バルサ蝦夷と比べて、同じ距離の中でより手数の多い誘いを繰り出せる分、ヒラを打たせるタイミングだったり強弱だったり、誘いの演出がさらに多彩になった。ワイドなヒラ打ちから、ボディの支点を軸に背中だけを倒すヒラ打ち、頭を軸に尻を大きく振らせるヒラ打ち。様々なヒラ打ちを自在に表現できる。これを一度使ったら、ヒラを打たせるのが楽しくてたまらないと思う。あと自分的にこだわったのが、小魚が石を舐める時のようなヌメッ、ヌメッとした生命感のあるヒラ打ち。そういう動きをしてる小魚をヤマメが捕食する場面を実際に見てるから、そのなまめかしいギラツキ感はどうしても取り入れたかった。付け加えると、ボウイはボディバランスによって水馴染みを良くしてるから、サイド~ダウンで流れに乗っていく時に、本当の小魚のように流れに入っていく。そのスピード感でもリアルを表現できる。

【開発に際して】
◎ボディ形状
(ヒラ打ち時のアピール力が高い体高のあるフラットボディで、特に背中側から見た時の、鼻先から背中にかけてのフォルムが特徴的。頭の部分は平面に近く、そこから徐々にエッジが立っていく形状になっているが、その意図は?)
それは水馴染み、水の受け流し方を考えた形状で、単純に言うと、頭の平面で受けた水圧を、そこからエッジに向かう曲面で後ろに流す感じ。それによって頭を下げる力が働くので、後方寄りの重心ながらリップ抵抗を無暗に大きくせずにレンジをコントロールできるし、アクションの立ち上がりも速められる。だから流れの中でも扱いやすい。バルサ蝦夷のような真ん中重心は立ち上がりもレスポンスもいいんだけど、どうしてもキャストの時にバタつきやすいし、フォールスピードも遅くなる。ボウイは後方重心にして、且つリップ角度もやや寝かせ気味にすることで飛行姿勢やフォールスピードの問題を解消しつつ、このボディ形状でレンジのコントロール性やレスポンス性能を向上させてる。何かを得れば何かを失うのがモノ作りの必然で、全体のセッティングのバランスでいかに長所を伸ばしつつ、欠点を打ち消せるかというところが、やっぱり一番難しかった。

◎ウエイト
最初はレスポンス性能を優先して、中心軸の4g前後を考えた。ただ、同じ4gでもバルサボディの4gとプラスチックボディの4gでは全然話が違って、レスポンスも沈む速さも違う。バルサのレスポンスの良さはあの浮力があるからこそで、例えば3.5gのバルサ蝦夷は自分的にはスローシンキング。今回はバルサ素材で本当のシンキングミノーを作りたかった。ULXでもキャストしやすくて、ストレスなくレンジキープできるミノー。でも中心軸の4gでは思ったより飛距離が伸びなかった。風の影響を受けやすい。それに、もっとフォールスピードも速めたいと思った。扱いやすさと、スレた難しい魚を釣るための性能、そこの両立を考えて。単純に後方重心にしただけでは、当然肝心の泳ぎに影響するから、ギリギリのバランスを見極めながら、あとはボディ形状、リップ形状で補った。ウエイトに関しては、3つ入っているウエイトの内、一番前のウエイトを1mm前進させるかバックさせるかで最後まで悩んだ。それで全然違う。それくらいシビア。流れのなかでの姿勢が違うし、それによってリップの設計も変わってくる。押しの強い川、流れの弱い川、いろんな川でバランス良く使いこなせることを考えて最終的にはバックさせた。その分お尻が重くなってウォブリングの動きに影響するけど、それはボディ形状とバルサ素材の浮力で補える範囲だった。

◎リップ
リップも本当にいろいろ試して、形状や位置、角度はもちろん、エッジひとつでもぜんぜん違う。水を切るだけじゃなく、面で捉えた水をどう受け流すか。エッジによって、リップの裏側に絶妙に水圧を巻き込むことで、ヌメッとした生命感のあるヒラ打ちが生まれる。ただ単に水を切って、レスポンスを上げるだけだったら基板リップもアリだけど、それでは出せない動きがあると思った。それに、自分が子供の頃、ミノービルディングに興味を持ち始めた時から、バルサミノーのリップはポリカとかアクリル板っていう認識があったし、そうしたトラウト・ルアーの伝統とデザイン性を自分なりに大切にしながら、それを工夫して理想の性能を完成させたかった。







 

「WOOD85、発売」  
2010.11.18 聞き手=丹律章

 どのメーカーもそうなのかもしれないが、イトウクラフトには、発案や企画はしたものの、発売するにいたっていないという未完成な製品がある。それらは、基本コンセプトだけしか決まっていないものもあれば、プロトとして形になっているもの、あと一歩で完成というものまでさまざまだ。
 無事完成して発売された製品の陰には、多くの失敗があり、苦労がある。そんな作り手の苦悩やトライ&エラーを知ってもらおうと思い、サクラマス用のウッド製プラグをこのサイトで紹介させてもらったのは、2009年の秋だったと思う。
 その時点で、この「WOOD 85」は、伊藤秀輝によると「動きは満足できるレベルに達しているが、飛距離が足りない」という状態で、発売の日程はおろか、発売できるのかそれともこのまま埋もれてしまうのかということすら、全く白紙だった。
 そんな状態だったルアーがこの秋についに完成し、2011年の2月には店頭に並ぶ予定であるという。完成に至る道のりと、「WOOD 85」の詳細を伊藤に聞いた。

――まずはスペックから伺います。当初の予定では、85mmで、13gと16gの2タイプだったはずですが、それは変わりないでしょうか。

伊藤 全長は85mmそのままですが、重量はちょっと変わりまして、最終的には14gと18gの2モデルということになりました。名称はそのまま「WOOD85」で、18gの方はフックを赤い色にして、区別できるようにして発売します。価格は税込みで3,570円。プラスチックミノーの約2倍の価格設定ですが、その価格に応じたミノーに仕上がったと自負しています。

――1年前には重心移動のプラスチックミノーに比べて飛距離が物足りないということでしたが、これはクリアされたと思っていいのでしょうか。

伊藤 ええ。もちろん十分な飛距離を確保しました。

――それはどのようにして克服したのでしょう。可能なら具体的に伺いたいのですが。

伊藤 飛距離を出すにはいろいろな方法論があると思うんです。これは前回お話したことと重なってくるんですが、まず、単純に重量を増せば飛距離は伸びます。ところが、重すぎると動きが生きてこない。メタルジグにリップをつけてもミノーのようには動かないのと理由は同じです。次にミノーのウェイトをより後方へ移動させることでも、飛距離を伸ばすことはできます。しかし、あまり後ろ過ぎると、これもミノーの動きが悪くなります。このバランスで何とかしようと頑張っていたのが、2009年の秋だったわけです。ですが、ウェイトを後ろに移動させるだけでは、どうしても限界があった。そこで今回は、それにプラスして、ウェイトを少し上方向に移動させることで飛行姿勢を安定させて、飛距離につなげる作戦をとりました。

――ウェイトを上に、ですか?

伊藤 上に移動するということは、重心が中心に近くなるということで、飛行姿勢が安定します。安定することによって飛距離が伸びるんです。簡単に言うと、重心が中心からずれればずれるほど、飛行中に回転するミノーになりがちなわけです。プラスチックミノーの場合、あえて重心を低くして、できるだけ浮力を上に集めることでヒラ打ちアクションに切れを持たせるようにしていました。プラスチックは素材自体が重くて、浮力は内部の空洞部分が担うわけで、ウェイトの位置が、動きに大きな影響を与えるんです。ところがウッドは素材が軽く、それ自体に浮力があります。だから、ウェイト位置を上げても動きに与える影響が少ないんです。逆に言えば、プラの場合もウェイトを上に移動させて飛行姿勢をより安定させた方が飛距離は伸びるんですが、それでは思ったようなアクションが出ない。そこが、プラの弱点といえば弱点なんですね。

――つまりは、ウッドという素材が持つ力を利用したということですね。

伊藤 そうです。それから、このルアーはウェイトが4つ入っているんですが、前方の2つと後方の2つ、その間隔を前のプロトより少し広げました。結果的に重心は少し後方に移動しています。もちろん重量アップも図っていますから、重心を上げたこと、後方に移動したこと、重量アップの総合力が飛距離につながっているんです。これら全てを可能にしたのは、ウッドという素材のポテンシャルの高さだと思います。

――サイズは85mmですが、このサイズにはどんな意味があるんでしょう。サクラマスミノーとしては、ちょっと小さいかなという印象なんですが。

伊藤 そうですね。うちのルアーでも蝦夷や山夷には90mm、95mmというのがラインナップされていて、サクラマスミノーはそれくらいが多いんじゃないかと思うんですが、もちろんこういうサイズでも釣れないことはないし、これまでも釣れていたわけで、確かに、春先のフレッシュランのサクラマスには、大き目のサイズでも問題はないと思うんです。でも、水温が高くなってきて、反応が鈍くなってきて、ルアーにもスレはじめた頃のサクラマスには、やはり少し小さめの方が効果的なんじゃないかと。春先だけなら大きくてもいいけど、春も初夏も、シーズンを通して実力を発揮してくれるルアーという前提で考えて、85mmというサイズに落ち着いたわけです。例えば、フレッシュランなどは1つのポイントに群れで入って来るので、そういう状況では、1本目はタダ巻きで釣って、ちょっとスレてきたらトゥイッチを掛けて2本目を釣って、その次にレンジを下げて、ボトムにステイさせた状態でがんがんヒラを打たせて誘う、という風に釣りを様々に展開することもできます。大きなルアーでは、そこにいる魚を一気にスレさせる恐れがあるし、必然的に泳ぎもトロくなるので、なかなかそうはいきません。

――「WOOD 85」は蝦夷ファーストのようなハンプバックスタイルというか、背中が盛り上がったフォルムをしています。この形状の理由はなんでしょう。

伊藤 フラッシングのアピールですね。85mmという少し小さめのミノーサイズなので、長さでアピールできない分、体高でフラッシングの面積を稼ぎたい。実はフォルムというのも飛距離には大きく関係があって、体高を低くした方が飛行中の空気抵抗が小さくて飛距離は出るわけです。でも、ヒラ打ちのアピールを考えると、ここで妥協するわけにはいかなかった。体高を保ったまま、つまり強いアピール力は保ったままで、85mmという小さめのミノーの飛距離を伸ばす。その解決方法として私がたどり着いたのが、ウェイトの位置だったというわけです。まあ、もうひとつ最終的な泳ぎと飛距離確保のキモとなった工夫はあるんですが、一応そこは企業秘密ということで。

――でもその企業秘密的な工夫っていうのは、ミノーを分解してみればバレちゃうんじゃないんですか?

伊藤 それは、おそらく分からないと思います。でも、言葉で説明すれば他の人にも真似はできる。そういう工夫です。

――では「WOOD 85」の動きについて説明してください。

伊藤 アクションは、やはりウッドという素材が提供してくれる部分が大きい。浮力が大きいから、キビキビしたアクションをさせることが可能になります。たとえば、大きな石が沈んでいてその石に着いているであろうサクラマスを釣ろうとした場合ですが、ルアーをアクションさせて、誘うエリアが直径1mくらいの円だったとします。そしてルアーは川の流れに押されるので、そのエリアをルアーが通過するのに3秒掛かると仮定します。すると、同じ3秒の間に、どれだけアピールできるかというのが重要になることがあります。プラとウッドでは、ここで大きな差が出る。ウッドの方が絶対に多く角度のあるヒラを打たせることができるんです。プラならその3秒の間に8回しかできなかったところ、ウッドなら最大15回ヒラを打たせられるっていうね。まあ、回数はあくまでイメージですけど。

――ウッドだと、ロッドアクションで横に倒れたミノーが、すぐに起き上がるので、時間をおかず次のアクションに移れるということでしょうか。

伊藤 そう。プラだと、サイズが大きくなればなれるほどルアーが起き上がるのを待たなくてはいけないことがある。もちろん、プラでも釣れる状況は数多くあるでしょうけれど、プラができないことをウッドのミノーでならできる領域が確かにあるんです。釣り師の意のままに動かすことができるのが、「WOOD 85」だということです。

――流れの中でのコントロール性が高いということですね。

伊藤 そうです。それに加えて、湖などの止水でも抜群に使い勝手がいいんです。自重があるので沈みが速いから深場を効率よく探れる。なおかつ流れの抵抗が無いと動かないプラグと違って、少ない抵抗で派手に動かすことができる。しかもレスポンスがいい。結果、魚を集める能力が高い。

――渓流の堰堤周辺の深場で、蝦夷ファーストが抜群に効くのと似ていますね。

伊藤 そうです。これまでスプーンしか届かなかった深場で派手な動きをされたら、イワナだってサクラマスだって、黙っていられないかもしれない。

――次に「WOOD 85」のカラー展開について伺います。ウェブサイトのカラーチャートを見ているんですが、今まで見たことがない色があります。KBというのがはじめて見るカラーですね。

伊藤 これは派手なカラーリングが多い中で、唯一地味なカラー。コパーベースに背中は黒。変化をつけたいときに頼れるカラーです。

――パーマークがあるカラーは、渓流用の小型ミノーとは違って2色だけですが。

伊藤 やはりヒラ打ちのアピールを考えたいので、フラッシング面積を広くとりたいんです。そのため横腹が目立つようなこういう色の展開になりました。だから、パーマークのあるカラーもパーマーク自体を薄めにしてあります。

――GOとGRは写真では両方ともいわゆる赤金に見えますが、この違いは何ですか?

伊藤 GOの方は、背中がオレンジから黄色のグラデーションになっていて、オレンジベリーです。GRの方は背中がオレンジではなく赤。腹はパールホワイトになっています。写真だと分かりにくいかもしれませんが、実物を見ると全然違うカラーです。カラーリングはプラよりさらに工程を増やして、差別化を図っています。仕上がりには自信を持っていますので、これまでのプラスチックミノーとはひと味違うカラーリングを、実際に釣具店で見てもらいたいですね。ルアー製作担当者に相当無理を言ったので、だいぶ苦労はしたみたいですが、満足のいくものができました。自分的に今、特に気に入っているのは、GSです。いわゆるグリーンバックですが、この玉虫色というか、独特の背中の色は、皆さんもしびれるんじゃないでしょうか。

 サクラマスシーズンが本格化する2月。「WOOD 85」は皆さんの手元に届くはずだ。大河川の太い流れで、固定重心とは思えない飛距離に、まずは驚いていただきたい。そして、遡上したてのサクラマスを相手に、その小さなボディーに秘められた実力を試して欲しい。初夏のスレマスを相手にする頃には、「WOOD 85」の凄さを、十分に体感していただいていることだろう。




 

「発売未定、幻のウッド85」  
2009.11.10 聞き手=丹 律章

 毎年イトウクラフトからは、いくつかのルアーやロッドなどのトラウト製品がリリースされる。発想を形にするチャレンジは常に続けられているわけで、当然新製品発売の影には、開発途上の製品はいくつもあり、中には、ある程度完成したのに、何らかの障害があるゆえにペンディング状態になっている製品も存在している。
 そういった製品については、本来おおやけにするべきではないのかもしれないが、以下に紹介するような試作品がたくさんあって、その中から限られたものだけが完成に至り、製品としてリリースされるということを知ってもらうだけでも多少なりとも意味があると思い、ややイレギュラーではあるが、発売未定のミノーの開発秘話をここに紹介させていただく。

――未完成のサクラマスミノーについて、伺いたいと思います。製品名はないので、ここでは便宜上「ウッド85(ハチゴー)」と呼ぶことにします。この「ウッド85」は、僕も2年前にサクラマス釣りで使わせてもらったことがあるのですが、このミノーの現時点でのスペックを教えてください。

伊藤 素材がウッドで、長さは85mm、重さは13gと16gの2タイプあります。

――どういったコンセプトで作られているものなのでしょう。

伊藤 サクラマス用の「蝦夷50SファーストモデルタイプⅡ」のイメージですね。中層からそれ以下のタナを狙うミノーとして考えています。

――ウッドを選択したのは何故でしょうか。

伊藤 ウッド素材を使うことによって、プラでは不可能な動きのキレが出るんです。その特性を有効に使って、ボトム付近でサクラマスを誘いたいというのが開発のコンセプトですね。

――ボトム付近を狙うサクラマスミノーとしてまず考えられるのがディープミノー。イトウクラフトでは「蝦夷90ディープ」や「山夷95ミディアムディープ」がありますが、これらとの違いは何でしょう。

伊藤 ディープタイプのルアーは、長いリップでボトム付近まで潜って、深いタナでサクラマスを誘うルアーなんですが、リップが長いだけに垂直方向に受ける抵抗が大きく、ロッドアクションを加えることについていえばショートリップのものほど簡単ではないんです。がんばれば多少動かせるけど、無理にアクションをくわえるには、ロッドパワーも体力も数倍必要で、しかも腕が痛くなるほどがんばっても、思ったほど大きなアクションは加えられない。動きは、ショートリップと比較すると、それぞれのルアー任せという部分が多いんです。だから、ショートリップの「ウッド85」では「蝦夷50SファーストモデルタイプⅡ」のように、ロッドアクションによってルアーを動かし、ボトム付近でギラギラとヒラを打たせるという使い方をしたいんです。テストを続けて、動き的には大体納得できるところまで完成度も上がってきたんですけど……。

――けど?

伊藤 飛距離がね。まだ納得できないんです。プラは重心移動が入れられるけれど、ウッドだとそれが難しいので、現時点ではたとえば「蝦夷90ディープ」と比べると、1割くらい飛距離が落ちてしまいます。極力ウェイトを後ろに持っていって、飛距離が出るようにしたんですが、あまり後ろ過ぎるとアクションが悪くなるし、ボトムから浮いてきてしまう。ウェイト位置での調整だけでは限界があるので、これからどうしていくか、悩みどころです。

――ウッドにも少しは弱点があるということでしょうか。

伊藤 泳ぎのキレなどウッドにはウッドのいいところがあって、飛距離とかコスト面とかプラにもプラのいいところはある。だからこそ、プラにはできない動きを再現してやらなければ意味がない。それでいて、劣る部分があるなら、そこは極力修正しなければならない。ウッドやバルサはプラよりもどうしても価格が高くなるし、飛距離もプラと同等にならないと製品化する意味がないと私は思っているんです。

――楽しみなミノーになりそうですけどね。

伊藤 厚さやリップ形状、顔を立体的にエラを出したり。プロトは12~13回作り直して泳ぎに関しては完成の域に達しています。でもどうしても飛距離がね。飛距離も含めて誰もが使えるミノーという意味では、やはりこのミノーは完成していない。一般の釣り人がきちんと飛ばせるものでないと、いまの時代、市場に出す意味があるルアーではないと思うんです。

――でも、既に実績も上がっているとか。

伊藤 2007年春に構想がスタートして、2007年秋にはプロトが完成。2008年のサクラマスシーズンからテストを始めて、私を含めスタッフの間でも実績は出ています。動きは確かにいいからね。

 実際に「ウッド85」で釣られたサクラマスとその釣りの模様は、「鱒の森」誌上において紹介されるはずだという。トータルとして完成することを見越して取材に用い、雑誌に掲載予定があるのに、まだ完成しない。雑誌に載れば使いたいという人も現れるだろう。しかし完成していない製品を市場に出すわけにはいかない。そこに作り手のジレンマがある。
 サクラマス用の「蝦夷50SファーストモデルタイプⅡ」。コンセプトを聞くだけでも楽しみなルアーである。しかし一般ユーザーレベルのそんな感想とは関係なく、飛距離という1点において未完成ゆえ、発売は未定。そんなルアーというのも、メーカーの内部には存在するのだ。
 飛距離の問題が解消され、晴れて発売に至るのか、はたまたこのままお蔵入りなのか。僕らにできるのは、ただ待つことだけである。


 

「5cm蝦夷の使い分け」
2009.04.20 聞き手=丹律章

――僕が伊藤さんと出会ったのは15年位前で、当時僕が所属していたルアーフリークという雑誌の取材で、最初は秋田の渓流に行きました。そしてでかい魚こそ出なかったけれど、ヤマメとイワナをたくさん釣った。それで、正確に数は数えていなかったけれど、60匹以上は確実に釣っているだろうし、100匹まではいっていないのではないかと僕は感じて、およそ80匹。これくらいじゃないかと思った。そして「必然の80尾」という記事を書いたわけです。あの頃イトウクラフトは、まだ釣り具の開発をしてなかったので、伊藤さんも他社のミノーを使っていました。カラーは何種類かあったし、スプーンも使ったけれど、その日ミノーは1種類しか使わなかった。それが今では、何種類ものミノーを使い分けています。この変化について聞かせてください。

伊藤「あの頃は魚がもっとスレてなかったんです。ミノーを投げると凄い勢いで追いかけてきて、腹のフックにガップリ食いつく魚も多かった。もちろん、今よりスレていないとは言え、それでも釣り方によって違いは大きく出るし、スレてくるとその違いがどんどん大きくなる。ただ、今は多くの釣り人が常にいろいろなルアーを投げてるから、以前とはスレの度合いが全然違う。ルアーと同じようなスピードで追いかけてきて、手前でUターンするとか、食いつくにしてもテールフックのあたりをちょんとつつく程度ということが多いんです」

――腹のフックに食いつくというのは、魚にやる気があるということで、テールフックをつつくというのは、それに比べるとやる気が少ないということですね。

伊藤「そう。そういう魚が多いでしょ。それでもテールフックに触ってくれればいい方ですよね。だから、そういうスレた魚にやる気を起こさせるために、今はミノーにも種類があった方がいいということなんです」

――なるほど。それでは具体的な使い分けについて。

伊藤「まず、蝦夷50Sっていうのは、一番オールマイティに使えるミノーですね。潜るタナとか動きの振り幅、いろいろなミノーの真ん中に位置するルアーです。様々なポイントを速いテンポで撃っていく場合には、こういう汎用性の高いミノーがいいんです。その局面に合わせた釣り人の操作、要求に幅広く対応してくれるわけだから。でも、そのポイントにいい魚がいることが分かっているとか、特にその場所を意識して釣るときには、それぞれの使い方になってくるわけです。たとえば、前にそのプールでデカイのがルアーを追ってきたんだけど、ルアーに触っていないからまた出るかもしれない。で、その場所を改めて攻めなおすって時には、まずはそのポイントの特性を考えるわけです。ルアーに汎用性はいらない。もし、その場所が流れの押しが強くて、フトコロもあってという時は、ヤマメは中層より下にいるわけだから、タイプⅡでヤマメのタナまで一気に沈ませて勝負するという作戦が成り立つわけです」

――フトコロのある場所ではやはり、タイプⅡが一番だということですか?

伊藤「ところがそうともいえない。タナを合わせて、ヤマメの目の前に送り込んでいるつもりでも、それでもヤマメが出てこないという時だってある。タナさえ合えば必ず釣れるっていう単純な話じゃないから、釣りは。そういう時は、そこにいる魚に対して、目の前にルアーを送り込むのではなく、ルアーの動きでヤマメの攻撃本能に訴えるという方法もある。渓流のアップストリームという領域で、一番振り幅があって、ピッチも細かく泳ぐのはバルサ蝦夷なわけだから、それで誘って、興味を持たせて反応させるという方法もあるんです。こういう場合は必ずこれっていうのではなく、引き出しをたくさん持っていて、その状況に応じて試すのが大事ですね」

――復刻したファーストモデルというのは、どういう位置づけになりますか?

伊藤「使い方の方向としては、バルサ蝦夷に近いです。アップストリームでよく動いて、ピッチも細かい。でも、バルサ蝦夷とは当然動きの質がちょっと違う。それにプラスチックとバルサを比べたら、やはり多少はプラの方が強い。もちろん通常の使い方でどうこうということはないけど、ミスキャストで岩盤にぶつけるとか、そうなると違ってくる。使い手の問題ですけど」

――ファーストモデルとバルサ蝦夷50Sを比べたら、ファーストは3.7g、バルサ蝦夷は3.5gと重量が違います。となると飛距離は多少ファーストの方がいいわけですね。

伊藤「ボディ形状やウェイトバランスにも左右されますけど、単純にはそうなりますね。他にファーストの方が優れている点といえば価格でしょうか。バルサ蝦夷より安い」

――では、ふたつを比較した場合、バルサ蝦夷の優れている点はどこでしょう?

伊藤「バルサ蝦夷は連続してトゥイッチを掛けた時に、より小さなロッドアクションでヒラを打たせることが可能です。同じ距離のなかで2~3割はヒラを多く打たせることができますから、ヤマメの闘争心を刺激するような釣りにはかなり有効な武器になると思います。タイミングが合わなくてバランスを崩したり、水面から飛び出したり、なんてことがない。ヒラを打ってから瞬時に起き上がって、またすぐ次のアクションに移行できる。それはバルサという素材が持つ浮力によるものだから、プラでは及ばないところなんです。そういう意味では安定性もバルサ蝦夷の方が優れていますね。アップストリームで、なおかつ底からの湧きが強い流れでも、ルアーが『死に体』にならずに安定して大きな動きを続けてくれる。そういった点では、頭ひとつふたつ抜けています。あと、さっきの飛距離というところなんだけど、去年、ファーストを復活させるためにテストに行ったわけです。で、一緒にバルサ蝦夷も使ってみた。するとね、ファーストはやはり飛距離が出るわけですよ。単純な重量やインジェクション特有の比重もあるし、形状も飛距離が出る設定だから。今の渓流では遠くからポイントを狙うという意味でもミノーの飛距離というのは大きな要素です。だから、バルサ蝦夷にももっと飛距離がほしいということになって、今のバルサ蝦夷はリップ形状が変わっているんです。空気抵抗を抑えるためにリップが細くなってる。それを補うために、重量バランスを変えて、ディッピング回数も変えたので重量自体も少しだけ重くなっています。泳ぎの違いも使って気付く人は多いと思うけど、2008年の春に出たバルサ蝦夷と、秋のバルサ蝦夷とではマイナーチェンジされているんです」

――ディッピングを増やしたことで耐久性も増していると。

伊藤「ワイヤーも変えてるしね。前は軟らかいワイヤーを使っていたんだけど」

――ワイヤーというのは、アイのワイヤーですか。

伊藤「そう。前のモデルはわざと軟らかいワイヤーを使ってたんです。だけど、アイが潰れるっていうユーザーの声があって、それで検討した結果硬いものに変更したんです。これまでいろいろなバルサ製なりウッド製なりのミノーを使ってきて、私はひとつの弱点に気がついていたんです。それは、ワイヤーが硬いためにアイ調整を繰り返すとワイヤー周辺の木の部分が潰れてユルユルになっちゃって、そのうちアイ調整が全く利かなくなってしまう。それが自分では許せなくて、バルサ蝦夷では軟らかいワイヤーを使ってた。軟らかいと鼻先だけで調整ができて、内部の木の部分には影響が少ないからね」

――なるほど。それには気がつきませんでした。

伊藤「軟らかいワイヤーでも、どこかに叩きつけるようなことをしなければ、曲がったり潰れたりしないと思うんだけどね」

――あ~、それに関してはですね、橋脚の奥を狙おうとして手前のコンクリートの橋脚にぶつけたりとか、そういうことはあるんです(笑)。中級とかそれ以下の釣り人の場合は。僕には良く分かります。そうやってルアーを何個壊したことか(笑)。

伊藤「釣り人がルアーを使い込んで、ある程度特徴が分かって、使いこなせるようになってきたら、アイを上げたり下げたりして、動きを変えて試してみたくなると思うんです、普通は。普通はっていうか、私はそうだったから。それにはワイヤーが軟らかい方がいいんだよね。アイは下げた方がロールの幅が大きくなるし、上げれば小さくなる。ダウンで使うときはわざとアイを上げて、泳ぎの幅を小さくして、動きはロッドアクションでカバーするとかさ。そういうのが楽しいんだと思うんですけどね。リップも現場で削ってみたりとか」

――そういえば、サクラマス用にミディアムディープっていう種類のミノーがまだ出る前、当時使っていたシュガーディープのリップを切って短くして、こうすると潜り過ぎず操作もしやすいんだって、伊藤さんに教えてもらったことがありましたね。何を使って切るんですかって聞いたら、ハサミで切れば簡単だって。普通のハサミでリップが切れるってこと、あの時に始めて知りました。

伊藤「あったねえ。そうやって工夫すると、ルアーをより深く知ることになりますね」

――切りすぎて、全然泳がないミノーを作ったりもした。

伊藤「そういうのはガンガン瀬で使えばいいんだから。ディープのアイになっている8の字は熱くすれば場所を動かせるんだけど、ライターであぶるとリップまで溶けちゃうから、8の字をハンダゴテであっためてやる。そうすればアイの位置を変えられて、泳ぎの幅も変えることができるよ」

――そういう工夫から、新しいルアーの発想は生まれてくるんですね。   FIN




 

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